ヒーローが公認制度の中で活躍する『僕のヒーローアカデミア』。その“影”で動いていたもう一つの物語が、『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』です。「時系列的にいつの話?」「ヒロアカとの関係は?」と気になって検索された方も多いのではないでしょうか。
この記事では、『ヴィジランテ』が描く時系列や世界観の違い、本編キャラとの関わり、そして作品としての見どころを、初心者にもわかりやすく解説しています。アニメの視聴方法や漫画のおすすめ購読先、さらには関連作品まで網羅していますので、『ヴィジランテ』を最大限に楽しむためのガイドとしてぜひご活用ください。
『ヴィジランテ』とは?概要と『ヒロアカ』との関係
『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』はどんな作品?
『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』は、堀越耕平先生原作の大人気漫画『僕のヒーローアカデミア(通称:ヒロアカ)』の公式スピンオフ作品です。作画は別天荒人さん、脚本は古橋秀之さんが担当し、集英社の「少年ジャンプ+」にて連載されました。全15巻で完結しており、2025年4月には待望のテレビアニメ化もスタートしました。
物語の舞台は“個性”という特殊能力が一般化した社会。ヒーローという職業が制度化されたこの世界で、正式な資格を持たないながらも自らの信念で人を救おうとする「非公認ヒーロー(イリーガル・ヒーロー)」たちの姿が描かれています。
主人公は、平凡な大学生・灰廻航一(はいまわり こういち)。彼はプロのヒーローになる夢を諦めながらも、「親切マン」という名で個人でボランティア活動を行っていました。そんな彼が、謎の覆面男・ナックルダスターやゲリラアイドル・ポップ☆ステップと出会い、次第に“ヴィジランテ”としての道を歩んでいくという成長物語が本作の核です。
スピンオフでありながら、物語の完成度は非常に高く、『ヒロアカ』本編とは異なる視点からヒーローという存在を再考させるようなテーマが込められています。
『ヒロアカ』との時系列的な繋がりとは?
『ヴィジランテ』の物語は、『ヒロアカ』本編よりおよそ5〜6年前の時代を描いています。つまり、デク(緑谷出久)がまだ中学生〜小学生だった頃。オールマイトが現役のNo.1ヒーローとして絶大な人気を誇っていた“全盛期”の時代です。
この作品では、雄英高校の教師として登場する相澤消太(イレイザーヘッド)やプレゼント・マイク、さらにはエンデヴァーといったキャラクターの若き日の姿が登場し、彼らがどういう道を経て現在の立場になったのかが語られます。
また、本編で登場する敵組織「敵連合」や改造人間「脳無(ノウム)」の原型とも言える事件や人物が登場するなど、裏側から『ヒロアカ』本編を支えるような構成になっており、時系列上の「過去編」として機能しています。
つまり、『ヴィジランテ』を読むことで『ヒロアカ』の世界観がより立体的に、そしてリアルに感じられるようになるのです。
スピンオフとしての魅力と独自の立ち位置
『ヴィジランテ』の魅力は、なんといっても“光が当たらない者たち”の視点で描かれている点にあります。『ヒロアカ』ではヒーロー科に通うエリート学生たちが中心ですが、『ヴィジランテ』の主人公・灰廻航一は特別な強さも派手な個性もない、ごく普通の青年です。
そんな彼が、「滑走(かっそう)」という移動に特化した個性を駆使し、街の片隅で人々を助けていく姿は、プロのヒーローとはまた違ったヒーロー像を私たちに見せてくれます。
また、ナックルダスターというキャラクターの存在も大きいです。彼は元プロヒーロー「オクロック」として知られ、個性を奪われてなお、素手でヴィランと戦う無骨な男。法を超えてでも正義を貫こうとするその姿は、本編の“型にはまったヒーロー像”に対するカウンターとして強く印象に残ります。
このように、『ヴィジランテ』はヒーロー社会の影にいる存在にスポットライトを当てることで、ヒーローとは何か?正義とは何か?というテーマに対して、より深く、多面的な問いを投げかけてくるのです。
【完全ガイド】『ヴィジランテ』の時系列まとめ
本編『ヒロアカ』開始の約6年前から始まる物語
『ヴィジランテ』の物語は、『ヒロアカ』本編が始まるおよそ6年前、つまりデクがまだ無個性の少年として将来に希望を持てなかった頃からスタートします。
この時代は、ヒーロー制度がすでに確立されているものの、その裏では犯罪が複雑化し、違法な薬物「トリガー」や地下ヴィラン組織が暗躍している状況でした。そんな中で、制度の枠外から人々を守ろうとするイリーガル・ヒーローたちが活動を始めていたのです。
灰廻航一は、ごく普通の学生として生活していましたが、ナックルダスターやポップ☆ステップとの出会いを通じてヴィジランテとして活動を開始。その過程でさまざまな事件に巻き込まれ、時には本編キャラクターたちと交差する場面も描かれています。
時系列順で追う主要事件(ナックルダスターの過去〜ポップ☆ステップの変化)
以下に『ヴィジランテ』内で起きた主な事件を時系列順にまとめてみましょう。
-
約6年前
ナックルダスター(雄黒巌)は、プロヒーロー「オクロック」として活躍していたが、“個性を奪う敵”によって能力を失う。その後、無個性ながらも自警活動を開始。 -
約5年前
灰廻航一が「親切マン」として市民を助ける中で、ナックルダスターやポップ☆ステップと出会い、ヴィジランテとしての活動を本格化。スタンダール(後のステイン)との遭遇や、違法薬物「トリガー」の脅威が表面化。 -
約4年前
敵ヴィランの製造元「ヴィラン・ファクトリー」の存在が明らかに。オクロックの個性を奪った男が再び暗躍し始める。ポップ☆ステップがヴィラン化してしまうという衝撃展開もここで描かれる。 -
約3年前
灰廻航一は「ザ・クロウラー」としてヒーロー活動を続ける中、ポップと対峙し最終決戦へ。ナックルダスターは一線を退き、クロウラーは自らの意志でアメリカへ渡る。
このように、主要キャラクターの成長や離別、敵組織との対決など、壮大なドラマが数年にわたって展開されていきます。
『ヒロアカ』本編キャラの若き日の姿とは(相澤・エンデヴァー・オールマイト ほか)
『ヴィジランテ』では、『ヒロアカ』本編で登場するおなじみのキャラクターたちの若き日の姿も数多く描かれます。
-
相澤消太(イレイザーヘッド)
本編では冷静沈着な雄英高校の教師として描かれる相澤先生ですが、本作では若き日の「まだ未熟なヒーロー」として登場します。ナックルダスターとの因縁、違法個性使用者への葛藤など、人間味のある一面が強調されています。
-
エンデヴァー
若手ながらも力に固執する姿勢はすでに顕著で、本作でもその厳格さが垣間見えます。力こそ正義という信念が、彼の過去と現在をつなぐ重要な軸となっています。
-
オールマイト
まさに全盛期真っ只中のオールマイトも、本作に登場します。正義の象徴として国民から圧倒的な支持を集めている彼ですが、陰では社会のひずみや不完全さを感じ始めているような描写もあり、『ヒロアカ』本編とは異なる一面が見られます。
また、プレゼント・マイク、ミッドナイト、塚内警部なども随所に登場し、それぞれが本編での立ち位置に至るまでの過程が丁寧に描かれています。
『ヴィジランテ』と『ヒロアカ』の世界観・舞台設定の違い
鳴羽田市とはどんな街?
『ヴィジランテ』の主な舞台となるのが「鳴羽田市(なるはだし)」という架空の都市です。この街は東京都内に位置しているという設定で、現代的で活気ある都市部と、老朽化した下町のようなエリアが混在しています。
特徴的なのは、都市の構造自体が“陰と陽”のようなコントラストで描かれている点です。高層ビルが立ち並ぶ開発地区の一方で、古びた商店街や裏路地、無人ビルが多く存在するエリアもあり、ヒーローたちの目が届きにくい“隙間”が生まれているのです。
このような空白地帯こそが、「公認ヒーローが見逃す問題」を孕んだヴィジランテ活動の主戦場となります。主人公の灰廻航一が活動するのも、まさにこうした“市民生活に密着した範囲”であり、日常と非日常が交差する生々しいリアリティが魅力の一つです。
また、鳴羽田市では「違法薬物トリガー」が流通していたり、「ヴィラン・ファクトリー」といった地下犯罪組織が暗躍していたりと、都市そのものが“ヒーロー制度の隙間”を象徴する舞台となっています。
公認ヒーロー制度 vs ヴィジランテ活動
『ヒロアカ』本編の世界では、「公認ヒーロー制度」が法的にも社会的にも確立されており、個性を活かした“職業ヒーロー”たちが国民から支持され、正式に活動しています。雄英高校のような教育機関で訓練を積み、免許を取得することではじめて“合法的”にヒーロー活動が許される仕組みです。
一方、『ヴィジランテ』に登場する主人公たちはその制度の外にいる存在です。彼らは正式なライセンスを持っていないため、「非合法ヒーロー=ヴィジランテ」と呼ばれています。ナックルダスターを筆頭に、法に触れるリスクを背負いながらも、人助けのために裏社会で活動しているのです。
たとえば主人公・灰廻航一は、個性「滑走(スライド)」を使って街中を高速移動し、酔っ払いを助けたり、迷子を保護したりと、地道な活動を日常的に行っています。どんなに善意に基づいた行動であっても、正式なヒーロー免許を持たない限りは「違法行為」として見なされるのがこの世界の厳しいルールです。
しかしながら、ヴィジランテたちの存在は、制度の“補完”として非常に重要な意味を持っています。公認ヒーローが見逃してしまうような小さなトラブルや市民の悩みに対して、ヴィジランテは迅速かつ柔軟に対応できるため、地域住民からの信頼も厚いのです。
この“ヒーロー制度の光と影”を比較する構造が、『ヴィジランテ』という作品に独特の深みを与えている要素だと言えるでしょう。
敵(ヴィラン)や「トリガー」など裏社会の描写
『ヴィジランテ』では、表社会のヒーロー活動だけでなく、“裏社会”の闇にも踏み込んだ描写が多く見られます。特に重要なのが、「トリガー」という違法な薬物の存在です。
この「トリガー」は、個性を一時的に増強する作用がある薬品で、使用者の体にも精神にも大きな負荷を与えます。ヴィラン・ファクトリーと呼ばれる地下組織が開発・流通を担っており、この薬物によって一般人や半端なヴィランたちが凶暴化する事件が続発します。
ナックルダスターはこのトリガーが社会に広がることを非常に危険視しており、法を無視してでも制圧に乗り出していきます。ここで描かれるのは、単なる“悪者を倒すヒーロー”ではなく、社会構造そのものと対峙する市民目線の正義です。
さらに、『ヒロアカ』本編で登場する「脳無(ノウム)」という改造人間の原型にあたるような存在や技術も、本作でその“実験段階”として登場します。複数の個性を無理やり組み合わせ、人間兵器化するという非人道的な試みが、後に『ヒロアカ』の敵連合やオール・フォー・ワンの陰謀につながっていくのです。
つまり、『ヴィジランテ』は単なるスピンオフではなく、『ヒロアカ』本編の“前史”として、裏社会の成り立ちをしっかり描いた作品となっています。
登場キャラ関係図と役割整理
主人公:灰廻航一(ザ・クロウラー)の成長物語
灰廻航一(はいまわり こういち)は、本作の主人公であり、通称「ザ・クロウラー」として非合法のヒーロー活動を行う青年です。彼は大学生で、ごく普通の青年でしたが、ヒーローに憧れを持ち続けていました。
彼の個性は「滑走(スライド)」。床や地面を這うように滑る移動型の能力で、派手さはないものの、使いこなすことで非常に高い機動力を発揮します。当初は軽い人助けにとどまっていた活動も、ナックルダスターやポップ☆ステップとの出会いを通じて、次第に本格化していきます。
彼の魅力は、決して「強くはない」こと。ヒーロー科出身でもなければ、目立った戦闘力もない。でも、人を助けたいという気持ちだけは誰よりも強い。そんな彼が、努力や仲間との連携を通じて、裏社会の巨大な敵と対峙するまでに成長していく姿は、多くの読者に共感と感動を与えます。
最終的には、ヴィジランテとしての活動を経て、“ヒーロー”の本質を体現する存在へと昇華されていきます。
ナックルダスター・ポップ☆ステップとのチーム
『ヴィジランテ』の物語は、灰廻航一の単独行動ではなく、仲間とのチーム活動によって成り立っています。
まずは「ナックルダスター(雄黒巌)」。彼は元プロヒーロー「オクロック」として知られた存在でしたが、謎の敵によって個性を奪われ、無個性のまま裏社会と戦い続けています。灰廻にとっては師匠的な存在であり、ヒーローとしての矜持や現場の厳しさを教えてくれる人物です。彼の戦い方は極めて泥臭く、暴力的ですが、その背景には深い信念があります。
次に、「ポップ☆ステップ(羽根山和歩)」。無許可ライブを繰り返す自称フリーアイドルで、個性は「跳躍」。軽やかな動きと明るい性格で、チームのムードメーカー的存在です。灰廻と行動をともにしながらも、ある事件をきっかけにヴィラン化するという衝撃の展開も用意されており、彼女の心の変化も本作の大きな軸になっています。
この3人のバランスが絶妙で、戦力としてだけでなく、人間関係のドラマとしても非常に見応えのある構成になっています。
『ヒロアカ』主要キャラ(相澤・プレゼント・マイクなど)との関係性
『ヴィジランテ』の魅力のひとつに、『ヒロアカ』本編のキャラクターたちとの接点があります。特に相澤消太(イレイザーヘッド)やプレゼント・マイク、オールマイトなどが印象的に登場します。
-
相澤消太(イレイザーヘッド)はまだ若手のヒーローで、灰廻たちの活動を法の視点から監視する立場にいます。ナックルダスターとは思想の違いから衝突も多く、彼のヒーロー観に大きな影響を与えています。
-
プレゼント・マイクは当時からラジオパーソナリティとして活躍しており、エンタメとヒーロー活動の橋渡し的な立ち位置を担っています。軽妙な口調ながら、時に核心を突くセリフも。
-
オールマイトは現役No.1ヒーローとして堂々と登場し、まさに“象徴”として描かれています。彼の影響力は灰廻だけでなく、多くのキャラクターに波及しており、まさに社会の柱そのものです。
これらのキャラクターと主人公たちの距離感、価値観のズレ、そして接点が、物語に厚みを持たせています。